絵本『せきたんやのくまさん』シリーズが胸に突き刺さる

大津市立図書館の児童書コーナーで見つけた絵本
『せきたんやのくまさん』に心を揺さぶられました。
あまりに衝撃的だったので、シリーズも全部読みました。
わたしが感じたことや調べたことをご紹介します。

『せきたんやのくまさん』の悲しさ

ストーリーそのものは単純です。
石炭を売ることを生業としている小さなくまさんが、
朝起きて、石炭を売りに行って、寝るまでの一日を描いたストーリーです。

しかしわたしはこの話を読んで悲しくなりました。
Amazonのレビューを読んだら
「かわいくて癒された」「なんでもない暮らしがすてき」
みたいなコメントが多かったので、考え過ぎなのかもしれません。

わたしが悲しくなったポイントを挙げてみます。

くまさんがひとりぐらし

あるところに、せきたんやの
くまさんが、
たったひとりで すんでいました
くまさんは、うまと、にばしゃと、
せきたんのはいった ちいさいふくろを、
たくさん もっていました。

この導入部からつらいです。
くまさんはベビーベッドで寝るほど小さなくまさんです。
こんな小さなくまさんがひとりで生計を立てているのです。

客の顔が怖い

くまさんは石炭を訪問販売しています。
この絵本に登場するお客さんは「おくさん」2人。
2人ともあまり笑顔ではないのが怖いです。

報酬が低い

くまさんの売る石炭は1袋あたり100円です。
わかりやすいようにそうしているだけか、
翻訳の段階でそうなってしまったのか、
当時の物価では妥当だったのかよくわかりませんが、
1日働いて売れたのが9袋なので、日給900円です。

おそらく石炭の仕入れにもお金がかかるでしょうし、
馬の餌代などもあるでしょうし、
とても暮らしていけるような気がしません。

ごはんを食べていない

朝ごはんを食べたという文章はあるのですが、
昼ごはんと晩ご飯を食べた形跡がありません。

くまさんと うまが うちにつくと、
うまは、うまのおちゃを のみました。
そして、くまさんも、じぶんのおちゃを
のみました。

次のページでは2階の寝室に上がって眠ってしまいます。
食べられるほど稼いでいないのでは…と心配です。

家族がいたらしい

寝室に上がる絵で、階段のそばに絵が飾ってあります。
くまさんと、両親と思われる3匹のくまが描いてあります。
さらにその隣にはコートが3着かかっています。

しかし絵本の冒頭で「たったひとりで」住んでいると書いています。
両親はどこか別のところで暮らしているのでしょうか。
それともコートは遺品でそのままになっているのでしょうか。
悲しい想像しか生まれません。

石炭屋の未来

追い打ちをかけるのが石炭屋という職業です。
エネルギー革命によって石炭は使われなくなってしまうのではないか、
使われたとしてもネットショッピングが主流になって
くまさんの出番がなくなってしまうのではないかと暗い未来しか想像できません。

くまさんシリーズ

『せきたんやのくまさん』はシリーズ化しています。
『パンやのくまさん』『ゆうびんやのくまさん』
『うえきやのくまさん』『ぼくじょうのくまさん』
さらに、日本で未翻訳となっている『ボートやのくまさん』です。

あまりに気になったので全部借りてきて読んでみました。

パンやのくまさん

こちらもひとりぐらしのくまさんですが、
ベッドがベビーベッドではなく普通のベッドになっています。

部屋に置いてある石炭が描かれているのは
前作からのつながりを意識しているのでしょうか。

朝早くからパンやパイやケーキをつくり、
移動販売と店舗販売の両方をこなしています。
客とのふれあいがあり、ゼリーをもらうなどしています。
そこそこ繁盛していそうなのと、晩ご飯を食べていたことは良かったです。

ゆうびんやのくまさん

やはりひとりぐらしのくまさん。
朝早く、駅から郵便局まで荷物を運び、郵便局での内勤も行い、
それから配達に出かけます。

くまさんは各家庭で歓迎されているようで、
もてなしを受けるシーンもあります。
郵便ポストの集配を行い、郵便局へ戻り、
仕事が終わると家に帰って入浴し、晩ご飯を食べ、眠ります。

クリスマスということもあり、くまさんにもこづつみが複数届いています。
くまさんの家の居間には結婚式と思われる絵(写真?)が飾ってあるのですが
主人公のくまさんはひとりぐらしなので、また意味深な気がします。

うえきやのくまさん

意味深な白い猫が各ページに描かれています。
しかし言及はされていません。

となりの家の庭の手入れをしたり、
自分で作った野菜を売りに行ったり、
事業内容が増えています。

ぼくじょうのくまさん

驚くべきことにかせいふのマフェットさんが登場します。
前作にいた意味深な白い猫は影も形もありません。

牛の乳しぼりをして、にわとりやぶたにえさを与えて、
市では牛の買い付けまでします。
午後になると牧場で作ったたまごやバターを売るなど、
多角経営に乗り出しています。

同じくまさんなのかという疑問

全体的に悲しさの漂う絵本ではあるのですが、
中でもぶっちぎりに『せきたんやのくまさん』が悲しいです。
仕事内容が単調なせいもあるのかもしれません。

『せきたんやのくまさん』の奥付にはこう書かれています。

この絵本のくまさんは、次の3冊の絵本でも活躍しています。
全部揃えてお楽しみください。

せきたんやのくまさんが転職しているとすれば
石炭屋の未来を憂う必要はないでしょう。

しかし同一のくまさんではないと仮定すると
やはりせきたんやのくまさんの未来を考えて暗い気持ちになります。

『ページをめくる指』の解説

あまりにせきたんやのくまさんが浮かばれないので、
一連の絵本について書かれているものがないか探しました。
行きついたのがこちらの『ページをめくる指』。

『母の友』に連載していた、絵本を紹介するコラムをまとめた本です。
著者の金井美恵子さんはくまさんシリーズを取り上げ、
作者のフィービ・ウォージントンとセルビ・ウォージントンについて触れています。

フィービとセルビ

絵を描いたのはフィービ、話を考えたのはセルビとその息子なのだそうです。
フィービとセルビは姉弟、あるいは兄妹と書かれています。
フィービは1910年生まれの女性で、
秘書として16年働いたのち、幼稚園の教師になって、その後結婚したのだとか。

情報のソースはどこかと言えば、

著作者事典の、わずか二十三行分の略歴と紹介でしか知り得ない

とのこと。

作品の背景を知って、少しは救われたような気がしました。
おそらく小さかったセルビの息子がくまのぬいぐるみを見て
「くまさんが石炭屋だったらおもしろいよね」というノリで作ったのだとしたら
そこまで深読みしなくてもいいのかもしれないと思ったのです。

時間の経過

『せきたんやのくまさん』がイギリスで出版されたのは1948年のこと。
そして次の『パンやのくまさん』は1977年に出版されています。
30年近い時が経っているのですが、そのことに関しては謎のままです。
たしかに絵本を見てみても、くまさんの絵が変わっているのがわかります。

『うえきやのくまさん』以降は作者も変わっています。
フィービ・ウォージントンとジョーン・ウォージントンになっていて、
ジョーンはフィービの妹なのだそうです。
ひとりぼっちだったくまさんに白い猫やお手伝いさんが登場したのは
ジョーンの影響なのでしょうか。

金井美恵子さんの評

金井美恵子さんは一連の絵本について以下のように書いています。

決してあからさまに語られることのない微かな微かな絶望が、単調さと勤勉さと変わらぬ物や生活に対する心地好い満足感と愛の中に、ひそかにつつましく滲み出している。

積極的におすすめはしない

くまさんシリーズについていろいろと調べてみたら面白かったです。
わたしは『うえきやのくまさん』や『ぼくじょうのくまさん』がおすすめですが、
一番心に残るという意味ではやはり『せきたんやのくまさん』が一番かもしれません。
悲しい気持ちになるのであまりおすすめはできないのですが、
もしも興味があったら読んでみてはいかがでしょうか。


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宮島ムー

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子育て中の30代主婦です。広島東洋カープ、妖怪ウォッチ、プリキュア、ここたま、ローカル路線バスの旅など、好きなことについて書いています。記事一覧はこちらからご覧ください。
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